払い戻しを受けた高額療養費の確定申告時の取扱い
3月25日付けで掲載した「高額療養費制度の概要」に続き、今回は払い戻しを受けた高額療養費の確定申告時の取扱いについて確認していきたい。まず、医療費控除と高額療養費の関係について説明しておくと、毎年国税庁が作成している確定申告の手引きにも掲載されているとおり、高額療養費は医療費控除の計算では「保険金などで補てんされる金額」に該当することから、医療費控除の対象となる支払医療費の額から差し引く必要がある。私見であるが、高額療養費を差し引く必要がある旨を理解している納税者は少ないと感じている。また随分前の話であるが、「高額療養費は所得として申告が必要なのか?」という質問を受けたことがあったが、前項で述べた通りあくまで高額な医療費を支払った場合の払い戻しであるため、別途所得として申告する必要はない。
次に、確定申告時における高額療養費の取扱いを理解していた場合であっても、具体的にどの時点で発生した支払医療費から控除するのかという点も難所である。例えば、医療費の支払いを行った年(当年)と高額療養費の払い戻しを受けた年(翌年)が異なる場合、当年の支払医療費から高額療養費を差し引くのか、或いは翌年の支払医療費から差し引くのかという点は一般納税者にとっては悩ましいところであろう。
「当年」は、控除年と払い戻し年を一致させるという観点では至って順当な思考であるが、前項でも触れたとおり高額療養費の払い戻しには通常3か月以上かかるため、確定申告期限迄に高額療養費の払い戻し額が確定していない場合にはどのように処理すればよいのかという問題にも遭遇する。そのため、無意識のうちに「翌年」と考えている納税者も一定数存在するものと推測されるが、正解は「当年」であり、国税庁ホームページにおいても高額療養費の払い戻し額を見積もった上でその見積り額を当年に支払った医療費から控除する必要がある旨が掲載されている。
それでは最後に、仮に後日払い戻し額が見積り額と異なることとなったときは、どう処理すれば良いのかという点である。この点については、翌年の確定申告でその差額分を調整するという考え方が有り得るようにも思えるが、正解は遡って当年分の医療費控除額を訂正する必要がある。つまり、見積り額が実際の払い戻し額より少なかった場合には更正の請求により税額還付を受けることができ、逆に多かった場合には修正申告を行う必要がある。国税庁ホームページにも掲載されている論点ではあるが、さすがにここまで熟知している納税者はごく僅かであろうと考えられるし、たとえ会計事務所であったとしても繁忙期にあって法令通りの正確な処理を進めていくことは容易ではないだろう。
なお、詳細については、国税庁のホームページ参照。