一般納税者を対象とした相談会での失敗例とその対策①
先日の記事で触れた、東京都社会保険労務士会が実施する第1回実務修習講座の講義の冒頭、講師が初めて労働保険の相談員に従事した際の失敗談を紹介していた。この失敗談を聞いて「どの士業或いは職種であったとしても、最初は緊張と不安から多くの人が同じような失敗をしてしまうのだろう」と妙に納得してしまった。と言うのも、私も開業した年に初めて確定申告相談業務に従事した際には、申告内容以外のロジ面での凡ミスを重ねて相談者や周囲の会員に迷惑を掛けたことがあったからである。そこで本稿では、備忘録も兼ねて上記の相談業務における私の失敗・不手際とその対策について、今も記憶している範囲で幾つか紹介したい。
まず、各相談者への対応が全くもって不慣れであったという点が挙げられる。そもそも対面指導の経験が浅かったことに加え、実務従事年数が短かったことでアウトプットに時間がかかったことが原因であり、特に初回は午前から午後まで混乱続きであったことを今でも記憶している。また、当時は手書きで申告書作成を指導していたのだが、相談員1人が2名の相談者に対して同時並行で対応していく必要があった。しかし、私は一方の相談者にかかりっきりになってしまい、もう一方の相談者を放置してしまうというケースが度々あった。幸い相談者から苦情を言われることはなかったが、一方の相談者を放置状態にしていることを十分自覚していただけに相談業務終了後は深く反省した。
そこで翌年の相談業務従事に当たっては、前もって頭の中で同時並行指導のシミュレーションを何度も行った。その結果、翌年以降は(あくまで自己評価であるが)相談者を長時間放置する事態はなかったと考えている。この際に心掛けたポイントは幾つかあるが、端的に言えば「慣れ」の一言であり、一方の相談者に対する指導時間と相談者自身による記入時間とのバランスを、申告内容をベースに迅速に判断した上でケースバイケースに調整・対応していくことに尽きるだろう。ちなみに、現在は手書きではなくパソコンを使って相談員が作業を行うマンツーマン指導に変わり、相談員が複数の相談者に対応することはなくなっているが、私がパソコン入力を行っている間はできるだけ相談者を待たせない又は手持ち無沙汰にさせないよう、その申告内容に応じた臨機応変な対応を心掛けている。