一般納税者を対象とした相談会での失敗例とその対策②
次に、1人の相談者に対して時間を掛け過ぎていたという点が挙げられる。特に開業年の初日の相談会では、退職金や金地金が絡んだ複雑な申告内容に複数回遭遇し(これまで約15年間相談業務に従事した中にあって、これらのテーマが登場したのはこの時だけ)、即答ができずに確定申告の手引書をその都度確認しながら指導を進めていった。ちなみに、手引書は数百ページにも及ぶ分厚い書籍であり、それまで手引書をじっくり読んだことはなく、まして目次のインデックスを各ページに貼ったりしたこともなかった。よって、各論点が解説されているページを見つけ、さらにその内容をしっかり確認する時間が予想以上にかかってしまい、今考えても非常に要領の悪い対応であった。
そこで翌年以降は、手引書の目次と概要は毎年しっかり確認し、複雑な内容が絡んだ場合であっても対応する手引書のページをすぐに開けるように準備しておいた。その後は手引書のお世話になるような事例に遭遇することはほとんどないが、この初年の反省を踏まえ、私は今でも重たい手引書を毎年確定申告会場に持参し、その準備は怠らないようにしている。
さらに、申告会場で指導を行った上で提出される申告書については、作成後その旨を記載したゴム印を所定の箇所に押印する必要があるのだが、申告書の作成完了で安心してしまうが故にこの押印をあやうく忘れてしまうことが度々あった。しかも、押印する印鑑の種類や押印箇所が年によって異なるため、この状況は2年目以降も続いた。また数年目以降は、マイナンバー制度の導入により個人情報の取扱いに関する事項など申告内容と直接関係のないチェックポイントが年々増加し、これらの確認にも一層の注意を払う必要があった。
この対策としては、相談会終了直後にチェック漏れを起こしやすい事項やスムーズな確認手順の方法などをメモしておき、翌年の相談会直前に見直すことでその改善を図ることができた。ちなみにこのメモは、ロジ面よりもむしろ申告内容に影響するサブ面の備忘録として有効であり、例えば前年の確定申告書を持参していない相談者に対して寡婦控除の適否確認を失念しないことや、相談を受けて悩んだ論点(今でも覚えているのは初年に受けたシルバー人材センターの配分金の所得区分であり、恥ずかしながら当時はそのような配分金の存在すら知らなかった)を記しておいた。
以上2回に亘って相談会におけるロジ面での失敗例を紹介したが、こうした経験を糧にして今後も納税者に対する一層のサービス向上に努めていきたい。