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上場株式の配当所得等に係る課税方式の統一

 今回のテーマは、一般納税者にとってはかなり細かい内容であるが、随分前に本ブログで取り上げたことに加え、これまでの経緯に関しても興味深いので紹介したい。

 まず、これまで上場株式等の配当所得等や譲渡所得等については、所得税と個人住民税において異なる課税方式を選択することができた。具体的には、例えば上場株式等の配当所得について所得税では総合課税(又は分離課税)、住民税では申告不要といった対応を取ることにより節税を図ることが可能であった。ちなみに、こうした選択をする理由としては、例えば所得税では配当控除の適用を受ける一方、住民税は5%という低い税率が適用されることで、所得税・住民税トータルでのタックスメリットを享受できるという点が挙げられる。

 こうした異なる課税方式を選択するためには、従前は所得税等の確定申告書を税務署に提出した後、住所地の市区町村に住民税の申告書を別途提出する必要があったが、令和3~4年分の確定申告書では、第二表に住民税に係る申告不要の欄が設けられたため、この欄に〇印を付ければ別途住民税の申告を行う必要がなくなったという経緯がある。当所の関与先でも、例えば上記で紹介したような理由により異なる課税方法を選択する方が有利となるケースが数件あったので、特に本取扱いがクローズアップされることとなった数年前からは、より一層強く意識してその確認・判定を行うこととしていた。

 しかし過年度の税制改正により、令和6年度の個人住民税(令和5年分の所得税等の確定申告)からは、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択することができなくなる。つまり、所得税で申告不要を選択した場合は、個人住民税でも申告不要となり、所得税で総合課税及び分離課税により申告を行った場合は、個人住民税においても総合課税及び分離課税で申告したことになるのである。

 この変更により、所得税・住民税トータルでの納税見込み額をシミュレーションする必要があることは言うまでもないが、加えて課税所得金額が基準となる国民健康保険料の算定や医療費の自己負担割合なども考慮した上で、最善の課税方式を選択していく必要がある。従って、税理士側も税務のみならず、社会保険に関する基本的な事項を更に理解し、かつ常にその知識をアップデートしていなければ、納税者に対してベストチョイスを提供できない状況がこれまで以上に発生しうることになる。

 様々な税制が複雑・難解化する中にあって、税務以外のテーマに対するフォローアップも必要であるというなかなかハードな状況ではあるが、税理士法第1条に定められている「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」という使命に基づき、今後もより一層力を尽くしていきたい。

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