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税理士業務

無申告のリスクとデメリット

 事業所は原則として毎年1回確定申告を行う義務があるが、残念ながら何らかの事情により期限内に確定申告を行っていない事業所も存在し、中には複数年に亘って無申告というケースもある。実は数か月前に相談を受けたケースがこのパターンであった。税理士事務所側から見ると、①確定申告書作成のために必要な書類が残っておらず、正確な申告書作成に当たって支障が生じる、②税務署との各種連絡・調整に一定の労力を費やすことを余儀なくされる、③作業段階並びに作業完了後における依頼者とのコミュニケーション面における懸念、などのリスクが考えられる。従って、必然的にその受任に際しては一層慎重にならざるをえないが、今回は今後の申告・納税履行意欲など様々な事情を総合的に勘案した上で受任することとなった。

 ここで改めて無申告状態が続くことのリスク・デメリットについて考えてみると、まず本来納付すべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税といったいわゆる罰則金を納付しなければならないという、金銭面における直接的なデメリットがある。ちなみに、各年分の無申告加算税は、原則として納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となる。但し、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、この無申告加算税が5%の割合を乗じて計算した金額に軽減される。一方延滞税は、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される利息に相当する税金であり、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間の場合、納期限の翌日から2月を経過する日までは原則として2.5%、納期限の翌日から2月を経過した日以後は年8.8%の割合により課される。しっかりと期限内に確定申告を行っていれば納付を避けられたという意味では、まさに無駄な納税である。

 次に、前述の相談者のように建設業を営んでいる場合、建設業許可の取得に大きな支障が生じるといった事業経営上のデメリットがある。仮に許可が取れなければ対応業務が限定されることになり、取引先との信頼関係を損なってしまう恐れもある。さらに、こうした事態を回避すべく複数年度分をまとめて申告しようと思い立っても、取引記録の整理や必要書類の入手、さらに税務署からの督促や各種連絡・調整のために相当な労力を費やすことになり、結果として途中で挫折してしまうという負のスパイラルに陥ることになるリスクも十分考えられる。

 また、金融機関から融資を受けることが困難となる点も大きな問題である。現在はコロナ対策の一環として、例えば日本政策金融公庫が当面年末まで行う実質無利息による融資制度も存在するが、こうした恩恵を受けることは難しいだろう。それでも借入れが必要な場合、選択肢としては収入(所得)証明が不要な高利のローンに限られ、これは必然的に事業所の資金繰りをひっ迫させることになる。

 最後に、上記のコロナ対策に関連した現実的なデメリットとしては、政府・地方自治体から支給される給付金や支援金の申請を行うことができないという点が挙げられる。例えば、昨年から今年にかけて実施されている持続化給付金家賃支援給付金一時支援金月次支援金については、申請に当たって原則として過年度又は過年分の確定申告書などの税務書類を添付・提出する必要がある。仮に法人で前記全ての給付金・支援金の支給要件に該当する場合、現時点において累計300万円以上は受給可能である。この点を鑑みた場合、先の相談者が仮に1年前に相談に来ていれば随分状況は異なったのかもしれないが、今ここに至っては1日も早く無申告状態からの脱却を図るべく、必要なサポートを行っていくのみである。

 

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