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国税の納税の猶予制度

 前項で紹介した特例猶予をはじめとする猶予制度全般に関しては、今般国税庁がFAQとして公表している。猶予制度については、関与先が定められた期限までにしっかり申告・納付等を行っていれば基本的には登場することのないテーマであるが、その内容はかなり奥深いものであり、私も本FAQを通じて様々な論点に関して理解を深めることができた。そこで今回並びに次回では、50項目以上あるFAQの中から主な内容を紹介いきたい。

 まず国税の猶予制度とは、期限内の納税が難しい場合に申請により税務署長の承認を 受け、期限後に(必要に応じ分割して)納税ができるようになる制度である。猶予を受けるためには一定の条件を満たす必要があるが、猶予期間中(原則1年間)は、延滞税が通常の年間8.9%から 同1.6%に軽減される。現在の低金利を考えれば8.9%という割合は極めて高く感じられるが、これが5分の1以下の1・6%であればそれほど強い違和感を覚えないだろう。そして今回新たに創設された特例猶予の場合には、一定の要件(詳細は前項を参照)を満たすことによりこの1.6%が0%になる。

 ここで私が気になったのが、既に他の猶予を受けて分割納付中であった場合において、特例猶予の要件を満たしていた場合には、遡って特例猶予の適用を受けられないのかという点であり、実際当所の関与先の中に本事例に該当するケースがあった。本件については、所定の手続きを経ることにより特例猶予に切り替えることができ、既に納付済の延滞税がある場合には還付される旨が明確に記載されている。金額面で見ればそれほど大きなインパクトはないであろうが、それでも納付を回避できるという観点で考えれば納税者にとって有益な制度であると言える。

 特例猶予の適用要件の一つとして一定の収入減少要件があるが、これについては非常に弾力的な運用が行われているようである。例えば、①収入減少割合について、「概ね20%」というアバウトな記載になっていること、②売上減少の対象となる期間について、暦通りの月ではなく任意の1か月(例:3月15日~4月14日など)で判定することが可能であること、③前年同期の収入金額がわからない場合には、一定の方法で計算した概算値を算定基礎とすることも認められること、などである。いずれにしても納税者にとっては使い勝手が良い運用である。

 次に対象税目については、令和2年2月1日から令和3年1月31日に納期限が到来する国税(申告所得税、法人税、消費税など)であり、これは確定申告時の納付のみならず中間申告や修正申告分に係る納付についても適用される。なお、消費税の中間申告については、本年の課税売上高が前年より大幅に減少している場合、(税務署から送付される中間申告書に記載されている税額ではなく)仮決算による中間申告を行うことにより納税額そのものを減額する制度もあるので、適用を検討してみる価値は十分あると考えられる。

 さらに、特例猶予の申請は原則として納期限までに行う必要があるが、令和2年6月30日までは、納期限後においても申請することが可能である。従って、例えば令和2年3月末決算法人について、令和2年5月末が納期限となる法人税・消費税の猶予を受けようとする場合、申請期限は令和2年5月末ではなく6月30日となる。いずれにしても、申請は可能な限り早めに行うことが好ましいだろう。

足立区の中野浩志税理士事務所

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