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賃上げ促進税制の概要と留意点

 先月に令和6年度税制改正が国会で可決・成立したことにより、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主の場合には令和7年から令和9年までの各年)より賃上げ促進税制が拡充・強化される。そこで今回は中小企業(法人)に絞り、その概要について実務上の留意点も交えた上で説明したい。

 まず、本税制における中小企業の定義は、青色申告書を提出する資本金1億円以下の法人などである。改正の概要としては、全雇用者の給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合の税額控除率は15%、同2.5%以上増加した場合には同30%となり、教育訓練費が一定割合以上増加した場合や、子育てとの両立・女性活躍支援に向けた取り組みを行った場合にはそれぞれ控除率が上乗せされ、最大45%の税額控除の適用を受けることができる。さらに、その事業年度が赤字であったことなどにより税額控除の適用を受けることができなかった場合にはその繰越が可能である。

 これらの内容を確認する限りでは、賃上げが中小企業の税負担の軽減に大きな影響を与えうるようにも思えるが、実務上は必ずしも期待通りの効果をもたらさないケースもある。まず本制度は税額控除であるため、対象事業年度の法人税等が発生しない場合には、その事業年度中における税負担が減少することはない。つまり、黒字法人が前提であるがために、中小企業の約7割を占めると言われる赤字法人に対する直接的なインパクトはなく、これは試験研究や設備投資など他の税額控除についても同様である。また、政府が公表しているリーフレットなどでは最大45%の税額控除と明記しているが、その上限額は法人税額等の20%と定められている。おそらくこれまで本税制の適用を受けた法人の大部分がこの上限の適用を受け、結果として税額控除額が制限されてきたと予想される。従って、税額控除率だけが引き上げられてもその効果は限定的になってしまうことだろう。さらに、上乗せ措置の適用は中堅・大企業にとっては魅力的かもしれないが、少なくとも中小企業がこれらの施策等を早期に導入・実現させていくことは、人材面や資金面の制約などから決して容易ではない。

 一方、税額控除率の引上げと並ぶもう一つの改正である税額控除額の繰越については、今回の改正により5年間の繰越が可能となった。端的に言えば、これまで赤字法人にとっては有益な制度であった繰越欠損金の賃上げバージョンである。税理士事務所にとっては事業年度毎の適否判定並びに控除税額の計算といった事務負担が増加することになるが、少なくとも中小企業にとっては税額控除率の拡充よりもこちらの方が有り難い制度であると言えよう。なお、詳細は経済産業省のホームページを参照。

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