法人成りした場合における住民税の事務手続き
個人事業者が法人成りした場合における主な税務手続きについては、以前本ブログでも紹介しているが、今回は住民税に関する事務手続きがテーマである。具体的には、個人事業者が適用を受けていた住民税の納期特例(従業員が常時10人未満であるなど一定の要件を満たす事業所について、従業員等から給与天引きした住民税を年2回(原則として5~11月分を12月10日迄、12月~翌年5月分を6月10日迄)に分けて納付できる制度)について、法人成り後もその継続を希望する場合における事業所の手続き方法である。但し、個人事業者が従業員の住民税を特別徴収により納付しているケースはおそらく少ないと考えられることに加え、私の知る限りではそもそも住民税の納期特例を申請している事業所自体が決して多くないことから、相当レアなケースであるかもしれないが、実務で遭遇した事例であるので紹介したい。
まず、個人事業所が法人成りすることにより、特別徴収義務者である事業所の名称が変更されるので、事業所は「特別徴収義務者の所在地・名称変更届出書」を提出する必要がある。続いて、個人事業所に勤務しており、かつ個人住民税の徴収方法が特別徴収であった従業員については、勤務先が法人成り後の法人に変更になるため、併せて「給与所得者異動届出書」の提出が必要である。新法人がこの2書類を提出することで、法人成りに伴う事務手続きは一通り完了する。
さらに、特別徴収を継続した場合において住民税の納期特例を希望する場合、事業所は「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を別途提出する必要がある。本申請書の記載内容については、所得税の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」とほぼ変わらない。一方、適用時期について、所得税の場合には原則として申請書提出月の翌月末日に承認があったものとされ、申請翌々月の納付分から特例が適用されるのに対して、足立区の場合には特例の適用を受けようとする月の20日頃迄に提出すれば良いとされている。従って例えば2月分の住民税(原則3/10が納期限)から適用を受けたい場合には、2月20日頃迄に同申請書を提出すれば、2~5月分の住民税を原則6月10日迄に納付すれば良いことになる。
最後に、実際の事務手続きや運用(特に個人事業者であった時期に納付済であった月分の翌月分から、新法人が納期特例の承認を受けた月分の前月分までの納付方法など)については、自治体によって異なる可能性も考えられるので、実際に上記のケースに遭遇した場合には、まず提出書類や手順などについて各自治体に確認することが好ましいだろう。