源泉所得税の納期特例に関する留意点
先日、関与先より「このほど取引先に対して原稿作成の依頼を行い、依頼した原稿と一緒に受領した請求書を確認したところ、請求額として源泉所得税差引き後の金額(10万円)が記載されていた。本請求額は11月中に支払う予定であるが、差引かれた源泉所得税については、税理士報酬と同様に1月20日迄に納付すれば良いのか?」との質問が寄せられた。
源泉所得税については、原則として徴収した日の翌月10日(以下「原則通り」と呼ぶ)が納期限となっているが、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者が、給与や税理士等の報酬について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税については、「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出してその承認を受けることにより、年2回にまとめて納付できるという特例が認められている。ちなみに随分前の記事では、本申請書の承認月は翌月であるため、例えば新設法人がその設立月に支払った給与等については、原則通りに源泉所得税等を納付する必要がある点について触れた。
今回の質問は、同様に源泉徴収されている取引先に対する原稿料の支払についても、本適用が受けられるかという内容である。本件は、一定程度の税務知識を持った方でなければ気づかない事項であり、源泉徴収税額を一括納付できる点に着目すれば適用ありと考えても決して違和感はないが、結論としては原則通りに納付する必要がある(特例は認められない)。特例が認められるケースは、税理士・弁護士・司法書士など士業関係に対する報酬・料金等のみである。
さらに、(実際に寄せられた質問ではないが)特例適用の要件である「常時10人未満」のカウント方法については、常時勤務するパート・アルバイトも含まれる。従って、例えば昼時の2時間のみ常時10人以上の従業員が勤務しており、それ以外の時間帯は2~3名しかシフトに入っていない飲食店の場合、常時10人未満には該当せず特例の適用を受けることはできない。一方、例えば年末年始など特定の時期に臨時的に人を雇い、その時期に限って10人以上となった場合には適用対象となる。
以上細かい論点であるが、税務調査で指摘された場合には延滞税・加算税を課されることになるので、十分注意する必要がある。