軽減税率と飲食店の経営改善
消費税に関しては、適格請求書等保存方式(インボイス制度) の導入という大きな改正が令和5年10月1日から予定されており、これに先立って今年の10月1日からはその登録申請受付が開始されるなど、今後事業者は本改正を踏まえた対応を図っていく必要がある。但し、こちらのテーマについては、既に国税庁のホームページなどで詳しい内容が紹介されているのでそちらに譲り、今回は制度導入から約2年が経過する消費税の軽減税率制度に関する実務上の留意点、並びに本区分集計を契機とした経営改善の方向性について、顧問先である飲食店(以下「本店舗」と呼ぶ)の例をベースとして見ていきたい。
まず、売上集計時の留意点としては、本店舗のように店内飲食とテイクアウトを兼業している場合、その区分集計が必要となる。さらに、(税額計算とは直接関係ないが)本店舗のように昼間・夜間の2部営業である場合、経営管理面を意識した最低限の集計内容としては、①昼飲食、②昼テイクアウト、③夜飲食、④夜テイクアウト、の4パターンの売上が発生する。特にコロナの影響により、本店舗では昨年からテイクアウトの売上割合が増加しており、上記の②④に該当する売上について、誤って①③として処理することのないよう注意することが求められる。
仕入・経費については、軽減税率対象品目である食材・飲料仕入と対象外の飲料仕入などとの区分は必須である。また、本店舗のように食材と店内で使用する消耗品を近隣のスーパーで一括購入しているような場合の区分集計も求められる。ちなみに本件は、飲食店に限らずどの業種においても関係するテーマであり(例:来客用の茶菓子と事務所用の日用品をドラッグストアで一括購入しているケースなど)、事業所によっては頻繁に発生し、かつ少額であるため非常に煩わしく感じてしまうかもしれないが、金額の多寡にかかわらずしっかり区分することが必要である。
一方、仮にこの資料を経営管理目的で活用する場合、事業所にとって別のメリットを生み出すことも期待できる。例えば、①売上区分を契機として、飲食売上を時間別客層、単価などで細分化・分析する、②酒類とフードの利益率を改めて比較し、その採算性を再検討する、③これまでの仕入先と近隣スーパーでの食材仕入原価を比較するなど、原価率の改善に向けた仕入先の再検討を行う、などその活用方法は様々考えられる。従前よりこうした基本的な分析は既に実施済である店舗も多いだろうが、軽減税率の導入を契機として従前とは異なる切り口で見直していくことにより、コロナ禍で生き残るための新たなヒントを得られるかもしれない。