「経営力向上計画」とは、人材育成・コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために策定・実施する計画であり、経営力向上計画が認定された事業者は、税制や金融等に関する様々な支援を受けることができる。制度創設から既に数年が経過しているにもかかわらず、今回敢えてこの制度を取り挙げた理由は、このほど当所の関与先事業所が策定を行ったためである。ちなみに策定理由は、小規模事業者持続化補助金の審査に当たって、本計画の認定が加点項目となっていることが契機となったようである

　こうした施策の活用は、特に小規模事業者にとっては敷居が高いと考えられがちであるが、少なくとも本計画の認定を受けること自体はそれほど難解ではない。中小企業庁が作成・紹介している計画策定の手引きには、具体的な手続き方法や制度利用のポイントなどがわかりやすく説明されており、かつ申請書様式も簡素化されているので、本手引きに沿って進めていけば特に問題はないと考えられる。

　計画策定のメリットとしては、前述の補助金審査時の加点の他、税制・金融・法的支援など多岐に亘る。この中でも小規模事業者にとって特に有益な制度としては、①一定の設備取得時の即時償却又は税額控除の適用、②事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例、③日本政策金融公庫による低利融資、などであると考えられる（各事項の詳細については割愛）。　

　だが、これらを上回る大きな利点は、こうした計画策定を通じて現時点における事業所の強みや弱み、並びにビジネスチャンスやリスクなどを改めて真剣に考えることを通じて、今後の事業所のあるべき方向性を明確化することが可能であるという点であろう。特に日々のルーティン業務に追われていると、木を見て森を見ずといった状態に陥ることになりかねない。そして更に重要なことは、本計画に沿って経営力向上のための取り組みがしっかり行われているか定期的にチェック・改善していくことであり、これが計画策定の最大の目的と言っても過言ではない。いずれにしても、できるだけ多くの小規模事業所が、本活用を通じてその継続的な成長・発展に結びつけて欲しいところである。

　なお、詳細は中小企業庁のホームページ参照。