建設業における給与と外注費
建設業に対する税務調査において頻繁に指摘される内容が、作業員に対する支払いが給与と外注費のどちらに該当するのかという点である。給与と外注費の税務上の取扱いについて簡単に見ていくと、給与の場合には毎月作業員に対して支払われる給与から所定の税額を源泉徴収する必要があるが、外注費の場合には源泉徴収不要である。また消費税について、給与は消費税を計算する上で控除可能な課税仕入には該当しないが、外注費の場合には原則として課税仕入に該当するため、原則的な方法により消費税計算を行っている場合には納付税額が減少する。つまり、事業者側にとっては外注費として処理することが税務上有利であり、逆に税務署側は給与として認定することで、上記2点に対する追徴税額を課すことが可能となる。
次に両者の線引きであるが、消費税基本通達では幾つかの基準から総合的に判断することとされている。具体的には、①その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか、②役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか、③まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか、④役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか、の4点である。
各事項についてもう少しわかりやすく説明すると、まず①は、他人が業務を代行することが認められていない場合は給与となり、それが認められていれば外注費となる。続いて②は、業務について事業者から指揮・監督を受けている場合は給与となり、逆に指揮・監督を受けていない場合には外注費となる。さらに③は、作業員に対する支払いが勤務時間をベースとして行われているか否かであり、時間に基づいて支払われていれば給与、特に決められていなければ外注費となる。最後の④では、会社が材料や作業用具を準備するのか、或いは作業員自身で準備するのかの違いであり、前者であれば給与、後者であれば外注費になる。
これらを総合的に判断することは決して容易ではなく、かつ上記の4要件はあくまで判断の基準である。従って、仮に上記要件で全て給与に該当する場合には、必ず給与として認定されるわけではなく、逆に全て外注費に該当する場合においても、必ず外注費として認められるわけではない点は注意が必要である。但し、税務調査において無用の疑念を持たれないためにも、少なくともこうした諸要件についてはあらかじめ確認しておき、それぞれの契約実態に応じて適切に処理するとともに、その事実を証する書類等をしっかり保存・整備していくことが重要である。