山林所得の範囲と所得金額の計算方法
東京都内で事業所を営む関与先の社長から「今般、長年に亘り手付かずで放置していた地方の山林を土地ごと売却した。この山林を売却した場合には、山林所得として確定申告が必要なのか?」との質問があった。その山林は、元々その地域に居住していた社長の父親が所有していたものであり、社長がその山林を相続した後も数十年間そのままにしていたとのことであった。固定資産税もそれほど高額ではなかったので、特に強く意識することもなかったのであろう。
まず、一般の納税者にとって「山林所得」という名称自体馴染みがないであろうし、これまで地方で生活した経験のない都内居住者で、山林所得の申告をした経験のある方はほとんどいないであろう。かくいう私自身もこれまで実務ではほとんど扱ったことのない所得である。一方、国税庁が作成する確定申告に関する手引きでは所々に登場するワードであるため、このワードを何度か目にして記憶されている方にとっては、山林を売却=山林所得との思考過程を辿ることは十分考えられる。だが、山林所得とは山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいうため(山林を取得してから5年以内に譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得に該当)、今回のように山林を土地付きで譲渡する場合における土地の部分の譲渡による所得については、譲渡所得として申告を行う必要がある。
山林所得の金額は、総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)で求めることができる。総収入金額とは譲渡対価であり、山林を伐採して自己の家屋を建築するために使用するなど家事のために消費した場合は、その消費したときの時価が総収入金額に算入される。一方必要経費とは、植林費などの取得費の他、下刈費などの育成費や維持管理のために必要な管理費、さらに伐採費・運搬費・仲介手数料などの譲渡費用をいう。特徴的な点としては、一時所得や総合譲渡所得のように特別控除の適用があること、そして税額計算に当たっては他の所得と合計せず、他の所得と異なった計算方法により税額を計算することである。具体的には5分5乗方式と言われ、(課税山林所得金額 ×5分の1×税率)×5で求めることができる。
以上、特に大都市圏に居住する一般納税者が遭遇するケースは極めて限定的であるかもしれないが、自身又は親族が山林を所有している方は事前に確認しておくことが好ましいだろう。なお、詳細は国税庁のホームページ参照。