退職代行サービスと弁護士法違反
先日、退職の意思を本人に代わって会社に伝えるサービスを展開する事業所が、弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受けたとの報道があった。具体的には、弁護士でない者が顧客を弁護士に紹介して報酬を得ていた疑いがあったようであり、仮に事実であれば法令違反に該当する。
本サービスについては、若者を中心にかなり人気があったと聞いているが、法令違反に該当するか否かにかかわらず、私自身は以前から本サービスの存在自体に強い違和感があった。また、随分前に当所の関与先事業所の従業員が本サービスを利用して関与先事業所を退職したとの話を聞き、その時は弁護士以外の者が代理人として関与することは非弁行為ではないかと思った。ちなみに、東京弁護士会のホームページによると非弁行為とは、(a)弁護士ではない者が、(b)報酬を得る目的で、(c)訴訟事件に加え、当事者間で既に紛争が発生している事案や、将来紛争が発生する可能性が高い(あるいはほぼ避けられないような)事案について、(d)法律相談を行ったり、代理人として交渉を行ったりする行為を、(e)業とする(繰り返し行っている、あるいは初回であるとしても繰り返し行う予定で行う)ことをいう。
一方、今回家宅捜索を受けた事業所のホームページによると、退職代行は本人の意思をそのまま通知するのみであるため(交渉を行っているわけではなく)違法性はないとのことなのだが、個人的にはどうも釈然としない見解であると感じる。加えて、例えば退職金や未払給与の問題など交渉が必要となりうる場面が多岐に亘ることを考えた場合、通知のみで事態が解決しないケースは決して少なくないだろう。
なお、弁護士のみならず税理士や社会保険労務士についても、その資格を持つ人だけが行うことを許されている独占業務がある。各資格を持たない人が独占業務を行うことは法令で禁止されており、法令違反を放置することで各士業及び依頼者の双方に不利益を与えてしまうことになるため、行政による更なる取り締まりの強化が求められる。また、士業の独占業務に関しては、最近税理士と社会保険労務士の業際問題に起因する事件があったので後日紹介したい。






