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税理士業務

法人の解散・清算事務手続き

 税理士事務所開業以来、「法人を解散して個人として事業を続けていきたいが、手続きがわからないので教えてほしい」との相談・依頼が数件あった。以前は経営者の高齢化に伴ってこうした依頼を受けるケースが多かったが、最近では新型コロナウィルス感染症の影響による経営難が引き金となることが多いのであろうか。コロナ対策で支給される給付金や支援金の金額に関して法人・個人間で大きな差があることは、今すぐに個人成りという判断を躊躇させる要因になりうるのかもしれないが、いずれにしても法人格を維持することに伴う事務量の増加や社会保険加入義務などを総合的に考えると、この「個人成り」の動きは今後加速していくことが考えられる。

 これまで私が関与した案件については、いずれも金融機関等からの外部借入がないことに加え、資産・負債の構成も比較的シンプルなものであったため、それほど複雑な手続きを要することはなかったが、法人の解散・清算については日々の業務において取扱うことが少ないため、細かい事項については必然的に専門書を頼りに進めていくこととなった。

 本件に関する大まかな流れとしては、「解散事務」と「清算事務」に分かれる。税務上の処理を中心として概略のみ説明すると、解散事務はその事業年度開始から解散日までの確定申告を行い、解散登記を行った後に関係各局にその旨の届出書を提出する必要がある。

 ちなみに解散確定申告について、通常の確定申告作業と比べて根本的に大きく異なる点はないが、減価償却や寄附金の損金算入限度額の月数計算など解散事業年度が1年に満たない場合の特有の論点は存在するので、その作成に当たっては正確な処理が求められる。

 解散から清算までの間は、債権・債務の整理や銀行口座の解約といった事務作業を適宜進めていき、最終的に残余財産を確定させる。そしてその確定後は、清算確定申告書の提出や株主への残余財産分配を行い、清算結了登記並びに関係各局への届出書提出を経て、晴れて会社を消滅させることができる。清算確定申告については、解散確定申告とは異なり清算特有の論点が幾つか存在することに加え、①在庫処理、②役員退職金の支給、③役員による債務免除など多額の取引が発生する可能性もあるため、一層慎重に対応していく必要がある。

 以上、個々の手続きに関してそれほど難解な論点はないのだが、事務作業が多いことに加えて、全ての処理が完了するまで少なくとも2~3か月を要する。だが、個人成りのメリットも少なくないので、ケースバイケースで検討することが好ましいだろう。

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