所得税の予定納税額の減額申請
法人成りなどにより個人事業を廃止した場合、廃止年の所得税の確定申告を適正に行う必要があることは言うまでもないが、今回のテーマはその翌年の予定納税に関する事項である。
予定納税とは、その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合、その年の所得税等の一部をあらかじめ納付するという制度である。仮に従前どおり事業を継続している場合であれば、いわゆる税金の前払いとして考えれば違和感のない話である。しかし、仮に事業を廃止した場合であっても、例えば「個人事業の廃業届出書」を提出した者について税務署サイドで一律に本書類の送付をストップするような対応は行われず、事業廃止年の翌年にも予定納税に関する書類が納税者宛送付される。この予定納税の納付をストップする手続きが標題の申請である。
具体的には、予定納税の義務のある者が廃業・休業又は業況不振等により、①その年の6月30日の現況による申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合、②その年の10月31日の現況による申告納税見積額が既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる場合において、予定納税額の減額を求めることができる。手続き対象者は、上記のように事業を廃業した者に加えて、休業・失業をした場合や業況不振などのために本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる者などが該当する。また、申請書の提出時期については、第1期分及び第2期分の減額申請については、その年の7月1日から15日まで、第2期分のみの減額申請などについては、その年の11月1日から15日までと定められている(提出期限が土日祝等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限)。申告書の提出期限などと比べると意外と期間が短いので、失念することのないよう注意が必要である。
なお、本申請書の提出を失念した場合には、原則通りに予定納税を行う必要があるが、翌年の確定申告において納付済の予定納税額について還付を受けることが可能であるので、トータルで考えれば税負担は生じない。但し、本申請書の提出により無用な税金の前払いを回避できるため、廃業年特有の論点である①個人事業税の見込み控除、②未払消費税の経費計上、などと併せてしっかりフォロー・確認しておきたい論点である。