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所得税の平均課税制度

 過去の確定申告シーズンに受けた相談の中で、「昨年は土地賃貸に係る権利金を貰ったので不動産収入が大幅に増加した。今年の確定申告で多額の納税が発生すると思うと頭が痛い」と悩んでいるケースがあった。不動産所得については、事業所得と比べると所得は比較的安定的に推移すると考えられるが、多額の資産損失が生じた場合や今回のようないわゆる臨時収入があった場合には、大きく変動する可能性もある。こうした時こそ「平均課税制度」の出番であり、今回はこの制度について2回に分けて見ていきたい。

 平均課税制度とは、ごく簡単に言えば一時的に所得が増加した者に対する納税額を調整する措置である。所得税の税率は、所得が多くなるほど税率が高くなる超過累進制度が適用されているため、一時的に所得が増加した特定の年について納税額が急増することは好ましくないとの観点から本制度が設けられている。もう少し具体的に見ていくと、例えば毎年安定的に1千万円ずつ稼ぐA作家は5年間で5千万円(1千万円×5年)の収入を得る。一方、毎年200万円しか稼げないB作家について、ある年に出版した書籍が大ヒットしてスポットで4千万円の印税を得た場合、その年を含む5年間の収入合計はやはり5千万円(2百万円×5年+4千万円)である。このようにA・Bともに5年間の総収入額は5千万円であるのだが、実際には負担すべき所得税等はかなりの差が生じてしまう。その理由は、先に述べたとおり所得税の計算方法について累進課税制度が適用されているため、印税4千万円を稼いだ年の作家Bの所得税額が急増してしまうことによる。

 平均課税制度を適用することができる所得は変動所得・臨時所得の2つあり、それぞれ対象所得は限定されている。まず変動所得では、前項で述べた印税に加えて原稿料・作曲料による所得が列挙されている。一方臨時所得については、プロ野球選手が受け取る一定の契約金や、公共事業の施行などに伴い事業を休業や転業・廃業することにより取得する一定の補償金などとともに、不動産などを他人に使用させるための権利金や頭金(3年以上の期間契約を結んだ場合に、その金額が年額の2倍以上のもの。但し、譲渡所得に該当する場合を除く)が含まれている。

 次に適用要件としては、①変動所得と臨時所得がその年の総所得の20%以上であること、②過去2年の間に変動所得と臨時所得があった場合、その2年分の変動所得と臨時所得の50%がその年の変動所得以上であること、の2条件を満たす必要がある。ちなみにこの時に相談を受けた事案では上記の要件を満たしていたため、平均課税制度の適用が受けられることが判明し、納税額が数十万円減少した。なお、本適用を受けるためには、平均課税に関する一定の計算書を記入・提出する必要があるなど一定の事務手続きを伴うが、その節税効果を考えれば是非利用したいところである。

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