消費税の免税事業者となる場合の留意点
コロナ禍で売上高が大幅に減少し、大変厳しい経営を強いられている事業所も多い中、その売上高によっては消費税の課税事業者から免税事業者になるケースも十分考えられる。例えば、売上高が激減する一方、消費税の課税対象外である協力金を受給している小規模な飲食店などが該当する可能性がある。そこで今回は、このケースに該当する場合における消費税法上の主な留意点について見ていきたい(以降では、これまで課税事業者であった個人事業者を例として説明)。
まず、令和2年にコロナの影響により課税売上高が1千万円以下となった場合、速やかに「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出する必要がある。消費税の納税義務については、原則として2年前の課税売上高で判定するため、今回の場合には令和4年から免税事業者となり、令和3年は引き続き課税事業者として消費税の申告を行う義務がある。
次に、過去に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合、納税義務の免除によりその効力が失われることはない。従って、仮に令和3年の課税売上高が1千万円超となり令和5年が再度課税事業者となった場合には、令和5年は簡易課税により申告することになり、この状況を回避するためにはあらかじめ「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出が必要である。この点について誤って認識している場合、税額面で相当な影響を及ぼす可能性があるので、十分注意しておきたい事項である。
さらに留意したい事項は、棚卸資産の調整である。(簡易課税制度を選択していない)課税事業者が免税事業者となった場合には、課税事業者であった課税期間の末日において所有する棚卸資産のうち、その課税期間中に仕入れた棚卸資産については仕入税額控除を行うことはできない。ちなみに、令和3年の課税売上高が1千万円を超えた場合、令和5年は再度課税事業者となるが、この場合には免税事業者が課税事業者となった場合に該当し、令和5年の消費税申告時に別途棚卸資産の調整を行う必要がある。具体的には、課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた棚卸資産がある場合には、その棚卸資産に係る消費税額は仕入税額控除の対象となる。令和3年に行う調整とは逆のパターンになり、こちらもしっかり確認しておきたい論点である。