国税庁による納付書の事前送付の取りやめとその影響
国税庁では、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現に向けて、キャッシュレス納付の利用拡大に取り組んでおり、社会全体の効率化と行政コスト抑制の観点を踏まえ、一定の要件を満たす場合には令和6年5月より「納付書の事前送付」(以下「事前送付」と呼ぶ)を取りやめている。実は最近、この影響を受けて当所の関与先(年1回確定申告のみ関与している法人事業所)があやうく期限後納付となりかけたので、その概要を紹介したい。
まず、事前送付の取りやめ対象となる事業所の例としては、例えば納付書を使用しない納付方法(ダイレクト納付、クレジットカード納付など)や、E-TAXにより申告書を提出している法人などが挙げられる。この中で特に後者については、既に大部分の法人がE-TAXにより申告を行っている中、納税だけは納付書を使用しているというケースは十分考えられ、現在当所の関与先についてもこのパターンに該当するケースは多い。次に、事前送付取りやめの例外として、源泉所得税の徴収高計算書及び消費税の中間申告書兼納付書については引き続き送付される。つまり法人の場合、国税の中間納付に関しては法人税・地方法人税は事前送付の取りやめ対象税目であり、一方で消費税に関しては引き続き納付書が送付される。
冒頭で紹介した事例は、具体的には3月決算事業所の中間納付であり、かつ昨年度決算において数年ぶりに翌年度の中間納付義務が発生する規模の法人税額が発生したというケースである。この場合、中間納付に係る納付書は消費税分のみが同封され、法人税・地方法人税分は同封されないが、当該関与先はこれまでも中間納付は消費税だけであったことから、何ら不思議に思わずに消費税のみ納付を行い、法人税については何もせずに11月下旬を迎えてしまった。無論今年5月の決算面談時において、当所から法人税の中間納付についての説明は行っていたのだが、何分数か月前の話である。ちなみに、仮に消費税の納付書も送付されていなければ、不思議に感じて問合せなどを行っていたのかもしれない。
本件に関しては、念のため納期限直前に当所から情報提供を行ったことで事なきを得たが、定期的なコミュニケーションがある顧問先以外の関与先に対して、事前送付の取りやめについてどのようにフォローアップしていくかは今後の課題と言えよう。最も順当な対応としては、冒頭で触れた納付書を使用しない納付方法に切り替えることだが、様々な事情により短期間でその変更を図っていくことは容易ではない。従って当面は、今回のように中間納付のタイミングで対象関与先に一報を入れつつ、面談等の機会を捉えてキャッシュレス納付を促していくことが現実的な対応であるかもしれない。
なお、詳細は国税庁のホームページ参照。