社会保険労務士になるための事務指定講習受講の経緯
本稿以降では、無事社労士試験に合格したものの実務経験がないため社労士として登録できない者などを対象として、全国社会保険労務士会連合会が実施する事務指定講習に関する話であるが、その前に私が令和6年の事務指定講習を受講するに至った経緯を説明したい。
私自身は当初、社労士登録はほとんど念頭になかった。ちなみに、約25年前に登録した中小企業診断士についても、現在は税理士業務に追われて完全な休業状態である。しかし、社労士試験の勉強の過程で様々な知識を習得するに及び、「その他登録」(ごく簡潔に言えば、社労士として名乗れるが社労士業務はできない登録形態)であれば社労士会が実施する研修会の受講等を通じてタイムリーな知識や情報を継続的に得ることができるため、そうした内容を税務顧問先に提供することで顧客サービスの向上に資するのではないかと考えるに至った。
ちなみに、開業社労士として税理士との相乗効果を目指すことも選択肢としてはあるのだろうが、税理士業務だけでも専門性の高いテーマが多岐に亘り、かつ毎年複雑・難解化する中にあって、専門職業家として社労士業務にも従事することは、自分自身のキャパシティを考えた場合には到底困難と思われ、少なくとも私にとっては現実的な選択ではない。一方で、税理士業務とごく基本的なルーティンの社労士業務(社会保険の定時改定や随時改定、年度更新など)を抑えておけば、顧客に対するワンストップサービスの提供という観点においては非常に有益ではないかとも考えており、この点は現在抱えている税理士業務のボリュームや顧問先のニーズも踏まえた上で更なる検討が必要であろう。
話を戻して、仮に前述の「その他登録」であっても、社労士登録であることに変わりはないので、実務未経験である私の場合には事務指定講習の受講は必須となる。申込案内書類は10月に合格証書と一緒に送付されてくるので、指定された期間内にインターネットで申し込みを行い、かつ同封されている郵便振替用紙で受講料(77,000円)の支払いを行った。ちなみに、講習の受講は社労士試験合格年の翌年以降でも構わないが、実務未経験で将来的に登録希望ならばその年に受講しておくことが好ましいだろう。
翌年の1月下旬になると通信教育用の教材一式がダンボール箱で送られてくる。その中には講習のレポート提出に必須の書類に加えて、レポート提出には直接関係のない社会保険六法なる分厚い書籍も入っていたのだが、私は課題提出に当たってこの書籍を使用したことは1度もなかった。