中古建物の購入に係る必要経費
今年の所得税確定申告の中で、事業用資産として中古建物を購入した納税者の申告に関与する機会があった。この場合における税務申告上留意したい主な論点は2つある。一つは、当該中古建物の耐用年数計算であり、もう一つは必要経費の参入範囲である。
前者については、適用される耐用年数は法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数を使用する。そして、この使用可能期間の見積もりが困難な場合には、簡便法により算定した年数によることができる。詳細は割愛するが、その建物の法定耐用年数をしっかり確認できれば計算方法自体はシンプルである。また本件の応用バージョンとして、仮に取得した中古建物を事業の用に供するために資本的な支出を行った場合における耐用年数の取扱いについても、国税庁ホームページに紹介されている。
次に、中古建物購入時における必要経費の範囲である。まず、不動産業者に対して支払う仲介手数料は経費算入不可であるが、この点は誤解している納税者が多いと思われる。一般納税者の感覚からすれば違和感を覚えるかもしれないが、税法に定められている以上議論の余地はない。一方、登記費用(登録免許税・司法書士報酬)や不動産取得税は必要経費となる。少し細かい論点としては、未経過分の固定資産税の取扱いがある。租税公課として扱っても良さそうに思えるが、結論としては必要経費に算入することはできない。
最後に、こうした不動産は将来的に第3者に譲渡する可能性も十分あり、その場合には譲渡所得の申告が必要となるケースもありうる。こうした場合に備えて、土地・建物の取得原価やそれらに係る書類の管理はしっかり行っておく必要がある。