1. HOME
  2. ニュース
  3. 所得拡大促進税制の概要

NEWS

お知らせ

税理士業務

所得拡大促進税制の概要

 「所得拡大促進税制」とは、賃上げとそれに伴う消費の拡大を実現するために、生産性を向上させ、企業が自律的に賃上げを実施する環境整備を行う観点から、賃上げの実施に加え人材投資を増加させている企業に対する税制優遇措置である。近年、賃上げ率の伸び幅が縮小傾向にある中、少子高齢化の下での日本経済の持続的成長のためには、賃上げとそれに伴う可処分所得の増加を通じた消費の拡大が重要であるとの認識の下、平成25年度に本税制が新設され、その後の拡充・延長を経て現在に至っている。本税制は、雇用者数が増加した場合等に適用される「雇用促進税制」とは異なり事前の書類提出などを行う必要がないため、企業にとっては比較的使い勝手の良い制度であると言える。加えて、中小企業については様々な適用要件が緩和されているなど、企業規模にかかわらずメリットを享受できる点も大きい。

 所得拡大税制の適用を受けるための要件の一つは、「雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が、増加促進割合以上になっていること」である。おそらく大部分の納税者にとって難解な内容であると考えられるため、簡潔に述べると「平成24年度の給与総額と比べて、適用年度の給与総額が一定割合以上増えていること」である。ちなみに中小企業の場合、この一定割合は3%と定められている(以降は次項も含めて中小企業を前提とする)。次に、「雇用者給与等支給額が、比較雇用者給与等支給額以上であること」である。ごく簡単に言えば、給与総額が前年を上回っていることが求められている。まさに所得拡大税制という名称通りの要件と言えよう。最後に、「平均給与等支給額が、比較平均給与等支給額を超えること」であり、これは一人当たりの平均給与が前年比を上回っていることを課している。仮にこの要件がない場合、1人当たりの平均給与が大幅に減少しても、従業員を大量雇用することで適用を受けることができてしまい、法運用の観点からは順当な要件と言えよう。

 肝心の税額控除額であるが、平成29年4月1日前に開始した法人及び平成29年の個人事業主については、雇用者給与等支給額の増加額(適用年度の給与総額-平成24年度の給与総額)の10%を法人税又は所得税から控除することができる。但し、無条件に控除できるわけではなく、法人税又は所得税の20%が上限とされている。なお、冒頭においても「税額控除」と表記したが、赤字事業所の場合には全ての適用要件を満たしていても優遇を受けることができない。ちなみに、平成29年4月1日以後に開始した法人及び平成30年の個人事業主については一定の拡充措置が講じられており、黒字事業所については本税制の更なる利活用が期待されるところである。

 最後に手続き面について、適用要件を全て満たす場合には雇用者給与等支給増加額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要がある。くれぐれも適用漏れや添付書類等の失念がないよう留意したいところである。

 以上、各用語の定義や運用上の細かい点などは割愛した上でポイントのみ紹介したが、詳細については経済産業省のホームページを参照願いたい。また、本税制については今後大幅な拡充が予定されており、上記内容は現時点における制度であることにご留意いただきたい。

最新記事

料金プラン(法人)

料金プラン(個人)

料金プラン(法人・個人)