個人事業主が死亡した場合の予定納税
「個人事業主が年途中に死亡した場合には、一定の期限までに準確定申告を行う必要があるが、その際に予定納税欄に記入すべき金額は?」。さすがに一般納税者がこの疑問に辿り着くケースは少ないであろうし、私自身もここまで具体的な質問を受けたことはない。感覚的には、①死亡したのだから予定納税は不要なのではないか、②死亡月日の直後の回のみ納付すれば良いのではないか、などと考えても決して不自然ではないが、正解はその死亡時期によって取扱いが異なる。
まず所得税の予定納税とは、本年分の申告所得税の前払としての性質を有するものであり、前年の予定納税基準額が15万円以上の場合に発生する。次に、その納期は原則として7月31日(第1期)と11月30日(第2期)の2回であり、原則として前年の申告所得税額等の各3分の1ずつを納付する必要がある。
続いてここからが本題であるが、予定納税の納税義務の発生については、その年の6月30日時点(以下「判定日」と呼ぶ)で判定する。例えば判定日迄に死亡した場合にはその納税義務は発生せず、準確定申告においては考慮不要となる。一方、判定日後に死亡した場合には、その相続人が納付義務を承継することになり、その予定納税額は準確定申告で控除することになる。
ここで注意したい点としては、例えば7月1日に亡くなった場合、相続人は(第1期分のみではなく)第1期及び第2期分の双方を納付する義務がある。また、仮に故人が振替納税の手続きをしており、相続人がその引落し預金口座を解約してしまった場合、予定納税の引落しが行えなくなるため、所定の納付書で納付する必要がある。相続人が予定納税のことまで頭が回らない場合には、意外と発生しうるケースであるかもしれない。さらに、仮に相続人が予定納税の納付を失念していた場合であっても、準確定申告時には納付しているものとみなして申告書の所定欄に予定納税額を記入することになり、こちらは通常の確定申告時と同様の取扱いである。
以上細かい論点ではあるが、仮に処理を誤ってしまうと死亡に伴う諸々の事務処理が立て込む中でさらに煩瑣な事務が発生してしまうことになるため、十分な注意が必要である。