年次有給休暇の買い取りに関する税務上の取扱い
先日、会社を経営する知人から「現在運用している有給休暇について、従業員が消化しなかった日数に応じて金銭で買い取ることを検討しているが、その場合に金銭を受領した従業員側は課税されてしまうのか?」との相談を受けた。開業以来様々な質問や相談を受けているが、本件は税務のみならず社会保険分野にも影響する横断的な内容である。
年次有給休暇の概要については、令和7年2月25日付け記事「年次有給休暇制度の概要と現在の取得率」で触れているが、年次有給休暇の付与は労働基準法で定められているため、例えば有給休暇に代えて金銭や現物給与を支給することは法令違反になる。但し、法令を上回る日数の年次有給休暇の取扱いについてはこの限りではないので、このケースを前提とした回答としては、支給する法人側においては給与手当として損金処理が可能である一方、従業員側では給与所得として課税されることになる。臨時的な給与の支給と実質的に何ら変わりないことを考えると、双方の処理内容は順当なものと言えるだろう。
また、買い取り金額については労働基準法などによる明確な定めはなく、法人の就業規則において定めた算出方法が適用されるが、一般的には①通常通りの勤務を行った場合に得られる通常賃金、②労働基準法で定められた平均賃金、③健康保険料や厚生年金保険料の算出時に使用される標準報酬月額、が用いられている。
それでは、従業員が退職する際に未消化の有給休暇を買い取り、本来の退職金と合算して支給する場合はどうなのか。前述の思考に鑑みれば、やはり給与手当として処理することが妥当と考えられ、私も随分前に初めて本論点に遭遇した場合には同様に考えたのだが、結論としては原則として退職金及び退職所得として処理する必要がある。具体的には、法人側では本来の退職金額と年次有給休暇の買い取り額を合算して退職所得の源泉徴収を行うことになり、従業員側ではそれらの合算額を退職所得として認識する必要がある。特に従業員側においては給与所得又は退職所得のどちらに該当するのかによって源泉徴収税額が異なるため注意が必要である。
労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという年次有給休暇制度の趣旨を鑑みた場合、その制度設計に当たっては労務管理上のトラブル防止等の観点から社会保険労務士に相談することが好ましいだろう。






