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公的年金の繰下げ受給

 関与先から社会保険に関連する質問を受けることは頻繁にあるが、先日もうすぐ65歳を迎える法人代表者から「年金の受給繰下げは行った方が良いのか?」という質問を受けた。

 老齢厚生年金の受給開始年齢は原則65歳であるが、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間に繰り下げて増額した年金を受け取ることができ、寿命が長ければ繰下げによる手取り総額も多くなる。本制度については、近年メディア等でも取り上げられていることに加え、インターネット上では様々なシミュレーションも多数行われているため、当所の関与先でも知っている方は多い。本件に関して私が具体的なアドバイスを行うことは難しいが、①個人の経済的な事情、②受給方法に関する個人の考え方、③(法人役員の場合には)現在法人から支給を受けている月額役員報酬、などがその判断に影響しうる要素であると考えられる。

 ①及び②は現実的な要素であり、不測の事態も考慮に入れつつ、自身の寿命や老後の支出予定などをしっかりシミュレーションをした上で最適な判断をしていくことに尽きるだろう。一方③については、在職老齢年金の支給停止調整額との関係があり、当所でもこの相談を受けた時には必ず確認するよう心掛けている。ちなみに令和6年11月に厚生労働省が作成した資料によると、令和4年度末時点において65歳以上で在職している年金受給者数は約308万人であり、そのうち年金の支給停止対象者は約50万人(約16%)である。私の知る限りでは、65歳であると現役の役員として月額数十万円の役員報酬を受け取っているケースが多く、厚生年金保険料を長年納付している場合には支給停止のボーダーラインを越えてしまい、これまでも本件を理由にして受給を繰下げているケースはあった。但し、令和8年4月以降は支給停止調整額が65万円に引き上げられているため、年金受給額によっては支給停止されないケースが増加してくることだろう。

 最後に、厚生労働省が作成した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」で老齢厚生年金受給権者の繰下げ受給状況をみると、令和5年度末現在で繰下げ率は1.6%にとどまっている。個人的には非常に低いという印象を受けたが、その割合は年々増加しており、その傾向は今後も変わらないものと考えている。なお、公的年金の繰下げ受給についての詳細は日本年金機構のホームページを参照。

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