米国株式の配当金に係る確定申告を行う際の留意点
先日、当所の関与先(個人)から「昨年米国株式を購入し、今般その配当金が振込まれたのだが、この配当金については確定申告が必要なのか?」との相談を受けた。一昨年から円安基調が続いていることに加え、海外商品の利回りは日本に比べて圧倒的に高金利であることから、これを機に外国債券・株式の投資デビューを果たしたという方も多いものと考えられる。特に最近はスマホ一つで少額から投資が可能であるため、これまでこうした投資に無縁であった人々にも徐々に普及しつつあると聞くが、当然のことながらこれらの商品には様々なリスクがあるので、それらのリスクを十分理解しておく必要があることは言うまでもない。
さて、上記の相談については、関与先の課税所得金額が多かったことや配当金額が少額であったことなどを勘案し、既に所定の源泉徴収が行われていることから確定申告は不要である旨のアドバイスを行った。だが、場合によっては確定申告を行った方が有利になることもあり、例えば外国税額控除の適用を受ける場合が該当する。
外国証券の投資によって得た利子・配当収入については、外国で源泉徴収された後に日本でも課税されることで二重課税状態となる。外国税額控除とは、ごく簡単に言えば外国で課税された税額のうち一定額を日本国内の所得税額から控除する制度であり、この外国税額控除の適用を受けるためには所定の書類を添付した上で確定申告を行う必要がある。
但し、例えば総合課税を選択した場合、配当所得が増加することで外国税額控除額を上回る税額が発生してしまう可能性もあり、かつ課税所得の増加は国民健康保険料や医療費の自己負担割合にも影響する。これらは基本的に国内株式の配当所得等(総合課税or申告不要)と同じ論点であるが、現状を踏まえてしっかりシミュレーションをした上で有利判定を行っていく必要がある。また、国内株式等とは異なる点として配当控除の適用がないことが挙げられ、国内株式等の場合と比べると総合課税を選択する際のボーダーラインが変わってくることになる。
以上、これまで当所が関与してきた所得税等の確定申告ではあまり遭遇しない論点ではあるが、冒頭で触れたとおりこうした相談は今後増加することが見込まれるので、少なくとも各投資商品の基本的なフレームや処理方法についてはしっかり確認しておきたいところである。