創立費・開業費の範囲と税務上の取扱い
※本記事は令和8年6月29日時点の内容です(平成29年8月1日作成、令和8年6月29日更新)。
「法人設立前の支出は、設立初年度の法人の損金(簡潔に言えば法人税法上の費用や損失)として計上することが可能か?」。当所の「創業・法人化相談プラン」をお申込みいただいた相談者から寄せられる最も多い質問の一つである。
本質問に対する回答として、まず法人の設立に際して発生する登記費用や開業準備のために支出した一定の費用は、創立費又は開業費として損金処理することが可能である。「創立費」とは法人を設立するために生じた費用であり、具体的には設立登記に係る登録免許税や司法書士報酬などが挙げられる。法人設立に当たっては司法書士に依頼するケースが多いと考えられ、特に株式会社を設立する場合には司法書士に対する支払額(登録免許税などの実費を含む)はかなりの金額に達することから、これらの費用はしっかり計上する必要がある。一方、「開業費」は法人設立後事業を開始するために特別に支出した費用を指し、実務上は①ホームページや店舗看板の作成費、②打合せのための電車・ガソリン代、開業に伴い必要となる事務所の器具・備品などを頻繁に目にする。なお、賃借した事務所等の家賃や水道光熱費など経常的な費用については、上記の特別に支出した費用には該当せず、開業費には該当しない点には注意が必要である。
次にこれらの費用は、法人設立初年度に全額損金処理することもできるが、仮に初年度が赤字である場合には次年度以降に損金処理することも可能である。初年度は経営が軌道に乗らずに赤字決算を迎えるケースも多いため、この場合には敢えて費用計上せずに貸借対照表の資産の部に創立費又は開業費として計上しておくことが考えられる。さらに、創立費や開業費と直接リンクする内容ではないが、個人事業主が法人化する際の留意点として、個人事業主時代に帰属する必要経費と新設法人の費用分を明確に区分することが挙げられる。一件の取引について、個人・法人双方での重複計上又は計上漏れがないよう、特に法人設立日前後の支払いについては入念な確認が必要である。
法人設立直後は、税務や社会保険に関する様々な届出書の提出や手続きなどで非常に多忙な時期であるが、将来的な節税の観点からこれらに係る請求書・領収書等はしっかりと保存し、その支出内容を明確にしておくことが好ましい。






