第57回社会保険労務士試験の結果概要
厚生労働省は先日、第57回社会保険労務士試験の結果概要を公表した。以前の記事でも紹介している通り、同試験の合格発表は試験日から約1か月後に行われ、少なくとも税理士試験と比べると非常に早い。従って、特に合否のボーダーライン上にある受験生にとっては不安に苛まれる期間が比較的短いという利点に加え、仮に残念な結果となった場合であっても、気持ちを切り替えて来年の受験に向けて早めのスタートを切れる点がメリットと言えよう。
さて、今年の結果概要に話を戻すと、まず受験者数は対前年比で微増の約43,421人。直近数年間で見た場合もコロナ禍以降は毎年着実に増加しており、同資格に対する安定的な関心の高さが窺える。一方、合格者数は対前年比で約600人減少しており、合格率も5.5%と昨年(6.9%)に比べて低下している。しかも今年の合格基準について、選択式及び択一式試験ともに総得点のボーダーラインが低下しているとともに、一部科目については合格基準点の引下げも行われていることは、今年の試験が非常に難解であったことを示している。この合格者数や合格率に関してはまさに運の世界であり、この運を味方に引き寄せるためには、個人的には経験と勘、そして日々の研鑽が大きな要素になり得ると考えている。
次に合格者の構成をみると、年齢別では50代以上が約27%を占め、最高齢者は78歳である。おそらく50~60歳代で定年又は早期退職し、その後のセカンドキャリアとして同試験を目指す方が数多く存在するのであろう。少なくとも税理士や社会保険労務士といった士業に関しては、80代でも現役で業務を行っているケースも決して珍しくないので、これまでの社会人経験を活かしつつセカンドキャリアを構築していく思考は、人生100年時代を考えた場合には至って現実的なものであると確信している。また、職業別構成では会社員と公務員を合計すると7割超であり、やはり社会人受験生が圧倒的に多い。無論合格するためには相当の学習時間を確保する必要がある難関試験ではあるが、何年も受験に専念しなければならないほどではないという点が、社会人が同試験に関心を持つ大きな要因の一つであると考えられる。さらに、男女別では女性が約4割を占め、この割合は他の主要な文系国家試験と比べても突出して高いことが特徴と言える。
なお、詳細は厚生労働省のホームページ参照。