就業規則の概要と作成に当たっての留意点②
労務に精通していない方が一から就業規則を作成することは予想以上にハードであるが、厚生労働省が紹介しているモデル就業規則などを多少リバイスすれば容易に作成できると考えている方も多く、かくいう私自身も社会保険労務士試験を受験する前までは同様に感じていた。だが、就業規則は労務管理の中核となる重要な書類であるため、その作成に当たってはやはり労務の専門家である社会保険労務士のサポートを受けることが好ましいだろう。
特に労働基準法の諸法令やその実務に精通している社会保険労務士であれば、事業所の実状をしっかり把握した上でその事業所にとって相応しい就業規則を作成してくれるとともに、その作成過程においても様々なサポートやアドバイスを受けられることで、事業所の労務環境の改善や労務管理の効率化に資することだろう。また、例えばキャリアアップ助成金(有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成)や両立支援等助成金(仕事と育児・介護等が両立できる職場環境づくりのための取り組みを実施した事業主に対して助成)など厚生労働省が実施する主要な助成金については、就業規則に所定の事項が記載されていることが要件の一つであることから、仮に事業所がこれらの助成金についても関心がある場合には、申請に必要な条項の追加・変更を正確かつ迅速に行うことで、こうした助成金をスムーズに受給できることも期待できる。
無論専門家のサポートを受けるに当たっては一定の報酬が発生するので、予算面の制約がある場合には依頼を躊躇してしまうケースもあるだろうが、自治体によっては就業規則の作成・変更に要した費用を助成する制度が存在する。例えば足立区では、同区内に本社又は主たる事業所があるなど一定の要件を満たす中小企業に対して、就業規則の作成・変更に要した社会保険労務士等への作成委託費用の2分の1(上限5万円、千円未満切捨て)を助成する制度を設けているので、まずは各自治体のホームページなどで確認してみることをお勧めしたい。なお、足立区が実施する就業規則作成助成金の詳細については、足立区のホームページ参照。