社会保険料の納付方法と社会保険料控除の適用可否
年末調整や確定申告における所得控除で大きな割合を占めるのは社会保険料控除である。社会保険料控除とは、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けることができる所得控除であり、具体的には健康保険料・介護保険料・国民年金保険料(以下「保険料」と呼ぶ)などが挙げられる。納税者本人が自身の保険料を口座振替や現金により納付した場合には、当該納税者が社会保険料控除の適用を受けることができるが、自己と生計を一にする親族の保険料を負担した場合の取扱いはどうかという点が今回のメインテーマである。
まず納税者(以下「納税者A」と呼ぶ)が、現金又は納税者名義の預金から口座振替により自己と生計を一にする親族(以下「B」と呼ぶ)の保険料を納付した場合には、実際にその支払を行った納税者Aが社会保険料控除の適用を受けることができる。一方、例えばBが高齢者であり、Bの負担すべき保険料が公的年金等から天引きされている場合には、Bに社会保険料控除が適用されることになる。現在後期高齢者医療保険料や介護保険料については、年間の年金受給額が一定額以下の場合などを除いて原則公的年金等から天引きされるため、このままであるとBの保険料を納税者Aの社会保険料控除として申告することはできないが、納税者A側で同控除を適用する方法はないのだろうか。
本件について、現在後期高齢者医療保険料に関しては市区町村で一定の手続きを行うことにより、公的年金等からの天引きに代えて口座振替により保険料を納付することを選択することができる。例えば足立区では、納付方法の変更には口座振替の手続きに加えて「納付方法変更申出書」の提出が必要であり、天引きを停止したい年金受給月の2か月前の上旬が同申出書の提出期限である旨がホームページに掲載されている。従って、Bの保険料を納税者A名義の預金から口座振替により支払う旨の手続きを行うことで、納税者Aが社会保険料控除の適用を受けることが可能となる。但し、本件は後期高齢者医療保険料に関しての措置であり、現時点で当所が把握している限りでは、介護保険料に関しては納税者の希望で年金天引きを口座振替に変更することはできない。
以上やや地味な論点ではあるが、例えば同一生計親族間の所得に大きな差がある場合には検討に値するかもしれない。なお、詳細は国税庁のホームページ参照。