資格試験を再受験する際の留意点①
資格試験にチャレンジする場合、一定の学習時間を必要とする試験であれば1回で合格することは容易ではなく、おそらく2回以上受験するケースが多いものと考えられる。私自身も、これまで受験した資格試験のうち日商簿記検定1級、中小企業診断士、税理士(簿記論・消費税法・法人税法)、社会保険労務士などその大部分は2回以上受験しており、中には3回以上受験したこともある。残念ながら不合格が決定した後は、悲しみに暮れる中にあっても翌年の合格に向けて勉強を再開していくことになるが、その際に注意しなければならない点について、私の受験経験に基づき3回に分けて紹介していきたい。
まず重要な点としては気持ちの整理であり、私自身も不合格=人生の貴重な1年を無駄に過ごしたという思いに苛まれ、気持ちを切り替えて学習を再開するまでにかなりの日数を要したこともある。この気持ちの切り替え方法については人それぞれであるため一概にコメントすることはできないが、一つだけ言えることは不合格となった年の勉強も将来的には有利に作用しうるという点である。自身の経験で言えば、私は税理士の消費税法の試験に2年連続で落ちているが、この時に約3年間に亘って同じ内容を繰り返し学習したことで試験合格後も基本的な知識がしっかり定着した。その結果、開業から十数年が経過した現在でも最も得意な税法科目は消費税であり、日々の実務においても大いに役立っている。一方、相続税法は約7か月間の学習で1発合格であったが、同税法の根底となる知識に関する理解が不十分であったことから開業後は不安や苦手意識が強くなり、現在実務において相続税申告は扱っていない。
つまり、毎年同じ箇所を同じように学習しているように見えても、学習に費やした時間や学習方法に応じて着実に知識がブラッシュアップされるため、試験勉強から離れてもその土台が崩れることなく頭の中に残り続け、結果として実務従事の際には大きなメリットをもたらすことが期待できるのである。無論、合格することが目的である受験段階において実務従事についてまで思考を巡らすことは現実的ではないのかもしれないが、人生100年時代を迎える中にあって、その僅か1年だけを捉えて不合格=無駄という思考は避けることが賢明である。