1. HOME
  2. ニュース
  3. 事業を承継した相続人に係る所得税の税務処理

NEWS

お知らせ

税理士業務

事業を承継した相続人に係る所得税の税務処理

 前回は、納税者が死亡した場合の準確定申告を中心に説明したが、今回のテーマはその被相続人の事業を承継した相続人側の所得税の税務処理についてである。この論点に関して実務上頻繁に遭遇するケースとしては、親が所有していた賃貸不動産を子が相続した場合が挙げられるので、以下ではこのケースに基づき説明していきたい。

 まず重要なポイントとして、被相続人が提出した税務申請・届出は相続人には引き継がれないという点が挙げられる。従って、相続人は別途開業届や青色申告承認申請書などを、相続人の納税地の税務署長に対して新たに提出する必要がある。特に青色申告の承認については、税額に大きな影響を与える可能性があるので、期限(死亡日によって異なる)までに提出しておくことが好ましい。

 次に収入の計算方法については、原則として死亡日までに支払期日が到達している家賃収入が被相続人の収入(準確定申告が必要な収入)となり、死亡日の翌日以降の収入については相続人分として申告する必要がある。一般的には当月分の家賃は前月末日までに支払う旨が契約書上に明記されているケースが大部分であると考えられるので、仮に死亡日が9月20日の場合、9月分迄の家賃収入は被相続人の準確定申告に含め、10~12月分が相続人の家賃収入となる。この場合において、例えば賃貸用マンション(10室)を相続人である子2人が1:2の割合で相続する場合には、原則として不動産収入・経費ともに1:2の割合で按分計算を行った上で各相続人が申告することになるが、仮に子2人による遺産分割協議が年内中に整わなかった場合には、各相続人は法定相続分(1:1)に応じて当年分の確定申告を行う必要がある。

 さらに、例えば翌年の6月30日に協議が整って不動産の相続割合が確定した場合には、翌年分の確定申告については、1月1日~6月29日までは法定相続分に応じ、6月30日~12月31日までは確定した相続割合(1:2)に応じて確定申告を行っていくことになる。またこの場合において、協議成立前の収入等について、確定した割合をもって前年に遡って確定申告をやり直すことはできない点についても注意が必要である。

 最後に、上記の場合について、青色申告特別控除についても按分計算(例えば65万円控除の場合、各人が32.5万円ずつ適用)が必要なのではと考えられなくもないが、結論としては所定の要件を満たせば2人がそれぞれ65万円の控除を受けることが可能であり、結果として白色申告の場合と比べて2人合計で大幅な節税に結びつく可能性がある。ちなみに、本件は別段相続時に限定した論点ではないので、既に夫婦・親子・兄弟などで賃貸不動産を共有している場合には、所定の要件を満たす限り適用される。

 以上、所得税に関する被相続人並びに相続人の留意点について述べてきたが、次項では消費税に関する留意事項について見ていきたい。

最新記事

料金プラン(法人)

料金プラン(個人)

料金プラン(法人・個人)