税理士業務を遂行するに当たっての必需品は幾つかあるが、その中でも電卓は不可欠と言って良いだろう。無論、表計算ソフトやスマホの電卓機能を利用して業務を進めていくことも可能ではあるが、少なくとも私は事務所内での作業時はもとより、顧問先を訪問する際にも必ず持参するなど業務中は常に手元に置いており、まさに仕事上の相棒である。

　そしてこのほど、十数年に亘って苦楽を共にしてきたその「相棒」がとうとう寿命を迎えた。今夏の猛暑は人間や動植物を容赦なく苦しめているが、機械も決して例外ではないのであろうか。キーを押しても反応が鈍く、時間の経過とともに画面が点滅するという症状が突然発生し、その翌日には全くの無反応。たかだか電卓１台の話に過ぎないが、正直ショックであった。おそらくこの気持ちは、長年飼っていたペットが死んだ時にその飼い主が受ける悲しみに近い感情であるかもしれない。

　この相棒とは税理士試験の受験を決意した当初から一緒であり、さらに開業当初の諸々厳しい時期を共に過ごし、これまで長年に亘って多大な貢献をしてくれた。壊れた事務機器や道具類はできる限り早急に処分することを常としているが、さすがにこれだけは捨てることができず、未だに自宅デスクの引き出しの中に保管している。

　と言って、悲しんでばかりもいられない。早速メーカーに同機種の電卓がないか確認したところ、全く同じ機種は既に販売されていないが後継機種が存在するとのことで取り寄せた。しかし、そのボタン配置は微妙に異なり、何よりもタッチ感が全く違う。ある程度の予想はしていたが、慣れるまでには相当時間がかかることだろう。と同時に、この新しい相棒に１日も早く慣れることで、顧問先に対する業務サービスの更なる向上に努めたいとの決意を新たにしたところである。