個人事業税に関するお尋ね文書
「県税事務所から個人事業税に関するお尋ね文書が送付されたのだが、どのように対応すれば良いのか?」。本件は、私が税理士事務所を開業してから約15年が経過する中、個人事業主から何度か受けたことのある質問である。
本題に入る前に、まず所得税や住民税に比べると地味な税目である個人事業税の概要について説明したい。個人事業税とは、個人の方が営む事業のうち地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金であり、納税義務者は都道府県内に事務所等を設けて法定業種の事業を行っている個人である。また税額については、事業所得又は(及び)不動産所得をベースとして一定の加算・減算を行い、税率(大部分の事業は5%)を乗じて都道府県税事務所側が算出した上で毎年所定の時期に納税義務者宛に通知される。
だが個人事業主の中には、これまで個人事業税の申告や納付をした記憶がないという方も少なくないだろう。まず申告の記憶がない理由としては、所得税等の確定申告を行った場合には、同申告書第2表の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入すれば、別途個人事業税の申告をする必要がない点が挙げられる。上記のベースとなる所得については所得税等の確定申告で算出した所得金額を使用するため、別途個人事業税の申告をするというケースはほぼない。一方、納付した記憶がない大きな理由は、「事業主控除」の存在である。上記で簡単に紹介したとおり、個人事業税の税額算出に際しては事業主控除(年間290万円、営業期間が1年未満の場合は月割額)が認められており、本控除を含めた加算・減算を行った結果が0円となれば税額は発生しない。従って、例えば事業所得が毎年200万円程度で推移している場合には、基本的に個人事業税について意識する必要はない。
これらを踏まえた上で冒頭の質問に関して説明すると、少なくとも私が関与したケースにおいては、個人事業税の納税義務者であり、かつ開業してから課税所得金額が上記の事業主控除の金額を初めて上回るなどの要件を満たす場合に送付されている。お尋ね文書の詳細は割愛するが、ごく簡潔に言えば納税者の営む事業が法定事業に該当するか否かを確認するための設問に回答する様式である。とは言うものの、ほとんどの業種は法定業種に該当し、これは税理士事務所など士業事務所も例外ではないのだが、個人で仕事を行っている一部の職業は法定業種には該当しないため、別途お尋ね文書などにより確認が行われているようである。
仮にこのお尋ねが送付された場合、無論各設問に対して事実に基づき正確に回答すべきであることは言うまでもないが、私見では各設問の選択肢の中にはわかりづらく、或いは迷いやすい肢もあるため、納税者が悪意なく設問の意味を取り違えてしまい、事実とは異なる回答をしてしまうケースも十分有り得るものと考えられる。この場合には、本来課税対象ではないにもかかわらず課税される、又はその逆のケースが発生してしまう可能性が生じ、かつそれが誤りであることに納税者自ら気付くことも難しいことから、長期間に亘ってその状態が継続するという事態も起こり得る。従って、その回答に際しては一層の注意を払って対応していくことが強く求められる。
最後に本題とは直接関係のないテーマであるが、個人事業税は納付した年の必要経費になるので、必ず漏れのないようにしっかり確認する必要がある。また、個人事業主の法人成りなどに伴う廃業年の確定申告に際しては、本件に関する特別な取扱いもあるため、併せて失念することのないよう注意しておきたいところである。






