医療費の窓口負担割合に関する経過措置
本件は税務とは直接無関係であるが、今年に入ってから親族や関与先事業所から複数の問合せを受けたので、紹介しておきたい。本経過措置について簡潔に説明すると、令和4年10月1日以降医療費の窓口負担割合が1割から2割に増加した後期高齢者について、一定の要件を満たす場合には支払医療費の一部が払い戻されるという内容である。還付金詐欺による被害が増加する中、本経過措置を知らない方にとっては、突然払い戻しに関するハガキが送付されて戸惑ってしまうのも決して無理はないだろう。また、払い戻しは振込によって行われるが、事前に登録されている口座がない場合には、あらかじめ振込先口座を知らせる必要があるため、口座情報の提供に対して強い不安を感じるというケースも十分考えられる。
肝心の制度概要であるが、令和4年10月1日から令和7年9月30日までの間について、医療費の自己負担割合が2割となる方について、外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う1か月の負担増加額を3千円までに抑えるという内容である。例えば、1か月の外来医療費の全体額が5万円の場合、窓口負担割合が2割の場合には本来5千円の負担増となるが、負担増加額の上限は3千円であるため、その差額2千円が高額療養費として払い戻される。従前1割負担であった方は単純計算で医療費負担が倍増することになるため、特に定期的な通院や投薬治療を受けている方にとっては有り難い措置と言えよう。ちなみに払い戻された高額療養費は、医療費控除額の計算上その年中に支払った医療費から差し引く必要があるので(上記例の場合には5千円-2千円=3千円が支払医療費)、併せて確認しておきたい。
また申請方法については、新たに2割負担となる方で高額療養費の口座が登録されていない場合にあっては、各都道府県の広域連合や市区町村から送付される申請書に口座情報等を記入・返送する必要があるが、既に口座登録が済んでいる場合には基本的に手続きは不要である。
令和4年度以降、団塊の世代が75歳以上となり始め、今後医療費の増大が見込まれる中にあって負担増は避けられないのかもしれないが、経済的理由により必要な医療を受けられないといったことのないよう、政府による各種施策の更なる展開を強く求めたい。