家賃支援給付金の不正受給問題
ここ数日、経済産業省の官僚2名による家賃支援給付金の不正受給に関するニュースや新聞記事を多数目にした。収入が激減して困窮する中小企業等の事業の継続を支え、再起の糧となる貴重な給付金をだまし取る行為については言語道断であり、しかも今回はこうした事業を推進する行政職員による行為ということで、特に強い憤りを覚える。
今回の不正は、容疑者本人を貸主、事業実体のないペーパーカンパニーを借主として申請を行っていたようであり、賃貸借契約書・支払証明書などの必要書類は偽造していたのであろう。やはり不正受給で大きな話題となった持続化給付金(令和2年10月18日付け記事「持続化給付金の不正受給問題」を参照)と比べるとその申請手続きが煩瑣である分、非常に手の込んだやり口で犯行に及んでおり、その悪質性は高い。
支給の迅速性も求められる中で、不正受給を阻止するための措置を講じることは決して容易ではないが、やはり一時支援金・月次支援金で行われている専門家による事前確認は必須であろう。無論その専門家と共謀した不正が行われることも可能性として0ではないが、一定の国家資格を有する者等による確認というプロセスが存在することは、間違いなく不正防止の抑止力として作用すると考えられる。なお、その確認機関が見つからず難儀した事業所も少なくないようであるが、これについては申請を諦めてしまうような事態にならぬよう、事前確認実施士業等の拡大や対象士業等に対する積極的な呼びかけ、或いは事前確認を行う事務局機能の強化などを通じて、実施事務局が責任を持って適切にフォローアップしていく必要がある。
一方で現行の事前確認制度については、その確認範囲が主に形式面のチェックにとどまり、例えば事業者が行っている具体的な取引内容や、作成した帳簿の正確性について厳格なチェックを行うことは困難である点が課題である。具体的には、①売上減少とコロナとの関連性、②適正な会計処理を通じて計上された月売上の正確性、③過年度(過年分)の書類の信頼性、などについては、従前どおり事業者の判断により作成・提出される。仮にこれらを厳格に取り締まるのであれば、税務当局とも連携した上で長期的視野に基づく徹底した検査体制を整える必要があるが、やはりマンパワーの問題で難しいであろう。現実的には、受給した給付金等を適正に収入(益金)計上しているか否かについての情報共有が限界であるかもしれない。
いずれにしても、コロナによる影響が長期化する中、今後も類似の給付金・支援金制度が創設・拡充される可能性は十分ありうるので、その際にはあらゆる方策を講じてその運用改善を図って欲しいところである。