topics 新着情報

2019.04.24

収用等により土地建物を売却した際の税務上の特例

 私の事務所近くを通る道路の拡幅計画については、今年に入ってからいよいよその動きが本格化し、現在は沿道に立地する建物の取壊しが進んでいる。そしてこれに関連して、先日沿道の土地所有者から税務相談を受けた。 具体的な相談内容は、立退きに伴って譲渡した本土地・建物について税金が課されるのかというものである。一般納税者の感覚としては、行政の事情による立退きであるため税金はかからないと考えてしまうかもしれないが、実際にはそう単純ではない。  
 まず、収用等により土地建物を売った際には、税法上譲渡所得から最高5千万円までの特別控除を差引く特例が設けられている。従って、本件に該当する譲渡所得が5千万円以下であれば、本譲渡所得についての税金は課されない。ちなみに、本特例以外に土地建物を買い換えた際に譲渡がなかったものとする特例も存在し、どちらの特例を適用した方が最終的に有利かについては、ケースバイケースで異なる。しかし、特別控除の適用を受けるためには、’笋辰薪效老物は固定資産であること、買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っていること、8共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続又は遺贈により当該資産を取得した者を含む)が譲渡していること、などの要件を満たす必要がある。特に△砲弔い討詫彙躇佞任△蝓⇔磴┐于燭蕕の事情により交渉が長引いて6か月を超えてしまった場合、本適用を受けることはできなくなる。
 それでは肝心の特別控除の対象となる補償金についてであるが、これは収用等された資産の対価となる補償金である「対価補償金」に限られている。従って、〇饂困鮗用等されることによって生ずる事業の減収や損失の補てんに充てられるものとして交付される「収益補償金」や、∋業上の費用の補てんに充てるものとして交付される「経費補償金」、資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付される「移転補償金」などは、原則としてこの対価補償金には含まれず、特別控除の適用対象外とされる。
 この3つの中で、実務上特に注意が必要な補償金は「移転補償金」である。例えば動産移転補償、仮住居・仮倉庫補償、移転雑費などについては、対価補償金には該当せず「一時所得」として所得税等の確定申告が必要となる。一方、建物の移転補償金について、実際に建物を曳家した場合には同様の取扱いになるが、仮にその建物を取り壊した場合、所得税においては(移転補償金ではなく)対価補償金として扱われることとなり、譲渡所得として特別控除の対象となる。ちなみに、営業休止補償や家賃減収補償については、事業所得や不動産所得として所得税等の確定申告等が必要である。このように補償金の区分によって税法上の取扱いが大きく異なることから、確定申告期においては行政から交付される明細書類等を確認しながら、所得区分を正確に行っていく必要がある。
 それでは最後に、収用等により土地建物を売ったときの特例を受けるための手続きについて述べたい。まず、この適用を受けるためには確定申告書の提出が必要である。つまり、本特例の適用を受けることにより所得税額等が0円になった場合においても、確定申告を行う必要があるという点について注意が必要である。次に、確定申告書に添付する書類等については、国税庁が公表しているチェックリストを参照しながら確認していくことが好ましい。具体的には、仝共事業者から交付を受けた買取りの申し出のあったことを証する書類である「公共事業用資産の買取り等申出証明書」、 買取り年月日等買収資産の明細である「公共事業用資産の買取り等の証明書」、収用事業に該当することの明細書である「収用証明書」、のいわゆる3点セットであり、これらは通常所定の時期に公共事業施工者から交付されるので、基本的にはそれらをそのまま使用すれば問題ない。
 ちなみに余談であるが、収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例を受ける場合には、代わりに取得した資産の登記事項証明書や、売買契約書・工事請負契約書・領収書など取得価額の分かる書類が必要である。 これらの事務の一つ一つは決して複雑なものではないが、確定申告期間直前になって慌てることのないよう、必要書類や手続き等については前もって整理しておくことが好ましい。

足立区の中野浩志税理士事務所

 


ページトップへ