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2019.01.25

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)等の適用に当たっての留意点

 先日、たまたま新聞の社会面で(特定増改築等)住宅借入金等特別控除等(以下「住宅ローン控除」と呼ぶ)の適用誤りに関する記事を目にしたので、早速国税庁のホームページを確認したところ、3パターンについて申告誤りの是正が必要であることが判明したとのことであった。本内容は、税理士にとっては他の論点以上に慎重な対応が求められるポイントである。その理由の一つは、今回の主役である住宅ローン控除は所得税に関する論点であるのに対して、例えばケース1及びケース3は贈与税に関する論点、ケース2は譲渡所得税に関する論点とのミックスバージョンだからである。所得税と贈与税、法人税と相続税など税目ごとのリンクを意識することは実務において大変重要であるが、と同時にうっかり失念しやすい論点であることも事実である。一方で、一般納税者にとってこれらはいずれも難解な論点であり、何を言っているのかわからないといった印象を持つかもしれないが、ここで一つずつ詳しく見ていきたい。  
 まずケース1は、住宅ローン控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例について、合わせて適用を受けた場合の住宅ローン控除の控除額の計算誤りである。具体的には、新築や購入等をした家屋を居住の用に供した年分又はその前年分において、その家屋を取得するに当たり贈与を受け、その受贈した額について贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けた場合において、さらに、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けるときは、住宅ローン控除の控除額の計算上、贈与の特例の適用を受けた受贈額を家屋の取得価額等から差し引く必要があるにもかかわらず、誤ってその減算をしていなかったというものである。   
 ポイントのみ簡潔に説明すると、住宅ローン控除の限度額計算の基礎となる「住宅借入金等の金額の合計額」は、基本的には―斬陲亮萋静に係る借入金の金額、⊇斬陲亮萋静に係る対価の額、のいずれか低い金額となる。但し、△砲弔い鴇綉に該当する住宅取得等資金の贈与を受けていた場合には、△龍盂曚ら差引く必要があるため、結果として住宅ローン控除額が減少するケースが起こり得るのである。一般的に考えれば何ら違和感のない論点であるが、実務上はその住宅取得等に際して、一定の住宅取得等資金の贈与を受けているか否かの確認を怠ることのないよう、十分注意する必要があろう。
 ケース2は、住宅ローン控除と居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例との重複適用である。具体的には、新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分及びその前後2年分ずつの計5年分の間に、居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合には、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けることができないにもかかわらず、その適用を受けていたというものである。簡潔に言えば、居住用財産に関する一定の特例の適用を受けていた場合には、住宅ローン控除の適用を制限されるという内容である。典型的な例としては、マイホームを売った際、一定の要件を満たすことにより譲渡所得から最高3千万円まで控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例」との併用は認められない。
 この重複適用制限を失念すると、予想を遥かに上回る税負担を強いられるケースもあり、仮に関与税理士が失念していた場合には大きな問題になり得るであろう。ちなみに私は以前、足立区役所が毎年実施する住宅関連の税務相談会に従事したことがあったが、これら2つの特例措置に関する相談は、他の相談内容と比べると多かったので、相談会実施前には必ずこの論点について整理を行うようにしていた。
 適用誤りの3パターン目は、贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例のうち、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用における所得要件の確認漏れである。具体的には、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例については、その適用を受ける年分の所得税の合計所得金額が2千万円超である納税者は、その適用を受けることができないにもかかわらず、誤って適用を受けていたものである。極めて簡潔に言えば、高額所得者については本適用を制限するというものであり、先に述べたケース1及びケース2とは異なり、一般納税者にも十分理解でき得る大変シンプルな内容である。
 本特例は、平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度である。 この非課税限度額は最大で3千万円であり、一般的な贈与税の非課税限度額(110万円)と比べると、非常に手厚い税制措置であると言えよう。  
 だが、適用を受けるための要件が数多く存在し、その要件の一つが冒頭で紹介した受贈者の所得要件である。ちなみに、これらの要件を全て満たした場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に一定の書類(戸籍謄本・登記事項証明書・売買又は請負契約書の写しなど)を添付して納税地の所轄税務署に提出する必要がある。相続・贈与関連については、今後一般納税者にとっても遭遇するケースが増えてくると考えられ、特に本特例措置については是非知っておきたいところである。

足立区の中野浩志税理士事務所

 


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